活性炭濾材はアンモニアを吸着しない
要点
活性炭についてわかったことや思いついたことを、短気な人向けに要点としてまとめてみました。
- ファンデルワールス力による物理吸着で水中や空気中の物質を吸着する。
- 水中のアンモニアをほとんど吸着しない。
- 空気中のアンモニアは吸着するが、これも決して効率が良いわけではない。
- 一度吸着した物質を放出する。
- より吸着力の強い分子がくると、それまで吸着していた分子を放出する。
- 浄水施設などで導入されている生物活性炭処理には、活性炭の寿命を延長する効果がある。
- 浄水施設で導入されているくらいなので、活性炭にも濾過バクテリアは定着できる。
- 観賞魚水槽でも定着するかは不明だが、多孔質セラミックスなら定着して、同様の多孔質物質である活性炭では無理というのは不自然だと思う。
詳しくは続きを。
調査に至る経緯
昨年は何の対応もしなかったので全滅した金魚すくい出身の金魚、今年もやってきました。
7月末ごろにやってきた2匹のうち黒出目金は残念ながら死亡、生き残った和金にGEXの「金魚のお部屋S」をあてがいました。今年は増えてもあと2匹程度、半年から1年くらいはしのげるだろうと踏んでいたのですが、先月最後の土曜日に和金4匹黒出目金1匹計5匹が到着。やたら体格の小さい黒出目金や片目がない和金も元気ハツラツゥで5日間のトリートメント期間中脱落者0。どうするんだよおい。
それはさておき、金魚のお部屋Sにはフィルターとして「ロカボーイS」が付属していました。素直で貧乏な私は水作エイトを買ってきたりすることもなく使っているのですが、活性炭を使ったフィルターが気になっていました。
吸着した有害物質を放出するなんて言われたら困ってしまいます。 そんなわけで、いろいろググってみました。
活性炭は化学濾過? 物理濾過?
濾過のお話①(ぷーさんと愉快な仲間たち)では、原理は化学の授業で習う内容なので、ここでは化学濾過と称します
としていますが、活性炭の吸着はファンデルワールス力による物理吸着ですから、化学濾過と言い切ってしまうのは微妙であるような気がします。
それに、化学濾過と言ってしまうと私のような人間は「アンモニアが化学変化してより安定で安全な物質になるのかぁ」なんて勘違いをしそうなので、とりあえず吸着濾過と言うことにします。
アンモニアを吸着する? しない?
アンモニア、吸着するの?(おおきのりこのページ)に何度か実験を行ってみましたが、活性炭は水中に溶けたアンモニアをなかなか吸着してくれませんでした
との記述があります。
また、吸着剤としての活性炭の性質(おおきのりこのページ)や交互吸着膜を用いたケミカルフィルタ(白鳥研究室へようこそ!)によると、活性炭は有機物のような非極性分子を選択的に吸着する吸着剤で、アンモニアなど極性の大きな物質の吸着は不得手なのだそうです。
我が家の金魚たち 活性炭について(我が家の金魚たち)で紹介されていた活性炭はアンモニアを吸着しない!?(キョーリン)では、水中に溶けたアンモニアや亜硝酸、硝酸を吸着することはほとんどない
としていますが、少なくともアンモニアに関する記述は正しいようです。
吸着したものを放出する? しない?
活性炭のお話し(山陰龍魚会トップページ)には、多孔質がいっぱいになると、吸着は続くものの、同量のすでに吸着した分子を放出する「脱着」が起こり、吸着と脱着が同時に起こるのが「ブレイクポイント」との記述があります。
また、前出の「交互吸着膜を用いたケミカルフィルタ」によると、より吸着力の強い分子が、すでに吸着した分子を押し出す「吸着置換現象」が発生するそうです。
これらから考えると、アンモニアのような吸着しにくい物質は容易に再放出されることになり、前出の「活性炭はアンモニアを吸着しない!?」に時間がたつと“一度吸着した汚れを放出する”といわれる事もありますがこれも誤解です
とあるのは正しくないようです。ただ、元々ほとんど吸着しないものの脱着や置換を心配する必要はないかもしれません。
活性炭で生物濾過、期待できる? できない?
近年、生物活性炭処理(BAC:Biological Activated Carbon Treatment)を導入する浄水施設が増えています。
水道水の高度処理(水の科学エッセイ)や世界における上下水道処理技術と水事業民営化の動向(「科学技術動向」2003年10月号)には、活性炭の多孔質が微生物の繁殖に適するとの記述があります。
また、EICネット[環境用語集:「生物活性炭処理」](EICネット:環境情報案内・交流サイト)によれば、生物活性炭処理は、活性炭に付着したり周囲に浮遊している微生物を利用した直接的な溶存有機物の生分解のほか、吸着した有機物の生分解による再生で活性炭の寿命を延長するものだそうです。
微生物による寿命延長は劇的で、水道水はおいしい2 <高度浄水処理水>(Water Works vol.6「健康とおいしい水」)で紹介されている東京都水道局金町浄水場の事例では、生物活性炭処理により、従来1年程度だった活性炭の寿命が4年に延びたそうです。
活性炭や濾過バクテリアの量が十分あれば、吸着濾過と生物濾過の組み合わせで長期間性能を発揮できるかもしれません。どの程度が「十分」なのかが問題ですね。
ひとりごと
- 活性炭を2週間で捨てちゃうのはもったいないようです。
- 浄水施設などで使われるような活性炭は、加熱処理して再利用するそうです。800℃~1000℃程度まで加熱できる設備をお持ちの方、試してみては?
- 多孔質セラミックスにも物理吸着の機能があってよさそうなのに、セラミックスの吸着濾過性能が話題にならないのは何でだろう?
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